これにはチームを所有する企業の意向が働いているんでしょう。チームの存在意義は「宣伝」や「福利厚生」、「企業内求心力のシンボル」といったことであるわけだから、採算など最初から考えられていない。特定の地域に張り付くより、工場や営業拠点のある場所で行うことに意義を求める。これは日本のバレー界にとって不幸なことだと思います。
もちろん企業スポーツが大きな役割を果たしてきたことは確かだし、それを否定するつもりはありません。しかし地盤沈下から逃れるためにエンタメ化してしまっているバレーを、再び世界のトップクラスと戦えるようにするには、地道な普及活動から始めるしかないでしょう。背の高い子供がバスケではなくバレーをやってくれるよう、地域レベルで進めていくためには、クラブチームによる一貫指導の体制がぜひとも欲しいところです。
底辺が広がると頂点は必ず高くなる。それはJリーグを見ていればわかります。地域密着の発想がいかに重要かは、昨年のプロ野球で、日本ハムファイターズを応援する北海道の盛り上がりを見ての通り。もともと巨人ファンの多いところで、私の父も50年来のファンだったんですが、あっさりと鞍替えしてしまいました。他方でbjリーグも着実に集客を伸ばしつつあります。
で、今日の記事タイトル「富士山方式」とはいったい何か?
これは二宮清純氏の著書「勝者の組織改革」という本に出てきた言葉です。Vリーグ発足前、識者として意見を求められた氏にバレーボール協会の幹部が言ったのだとか。『頂上が噴火することで裾野を広げた富士山のように、バレーも頂点たる全日本を強化し、爆発的に強くなることで底辺を広げる』…という理屈。地道な普及よりこちらが効果的と考えているんでしょうか?
バカですね。本当に。
女子が最後にメダルを取ったのは84年のロサンゼルス大会で、男子は72年のミュンヘン大会。二宮氏が協会幹部にその与太話をされたのはVリーグ発足前だから93年のことでしょうか? それからさらに14年の歳月が流れている訳ですが、協会はまだそのやり方が間違っていることに気付いていません。これからいったい何年待ち続けるつもりなんでしょうか?
世界大会をことごとく日本で開催し、組み合わせや試合順まで日本有利に組まれる。オリンピック世界最終予選までまたも日本で行われる。それも「強化」の一環なのかと、皮肉の一つも言いたくなります。そうやって「上げ底」の結果を出しておいて、惨敗したアテネの反省は何も生かされていない。北京でまた同じことを繰り返すのは確実です。そこには長期的なビジョンというものが何もありません。
あてにならない未来を漫然と待ち続ける「富士山方式」は問題外。地道に普及、育成を図り、Vリーグを充実させることで強化を進めていくことが唯一無二の選択肢ではないでしょうか? そのためには企業は「所有」ではなく「支援」に回ってもらいたい。チームの存在目的が宣伝や福利厚生ではダメなのだ。選手達自身にもリーグを盛り上げようという積極的な行動が必要です。選手会を組織することも一つの手でしょう。
今の状況ではこんなこと無理なのはわかっていますが、あまりに無為無策なバレー協会の姿勢に何か言わずにはいられないのです。日本バレーがかつての「活火山」に戻るには、相当思い切った改革が必要です。